東部丘陵線(とうぶきゅうりょうせん)は、愛知県名古屋市名東区の藤が丘駅から愛知県豊田市の八草駅までを結ぶ、愛知高速交通の磁気浮上式鉄道路線である。愛称は「リニモ (Linimo)」。
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常電導吸引型 (HSST) による日本初の磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)の常設実用路線である。HSSTのインフラ整備には、従来の中容量輸送の代表ともいえるモノレールはもとより、新交通システム以上の投資が必要となるが、これまでの車両とは異なり、電動機や車輪を持たないため、騒音・振動源が少なく、また、車輪が空転するリスクも無いため、加・減速や登坂性能に優れ、ゴムタイヤ式よりもさらに静かで乗り心地がよく、最高速度も上回る、などの多くの利点を持つ。車両は常に浮いており、停車中は機械式ブレーキにより静止させている。扉が閉まり発車するときに「ドン」という音がする。これは、機械式ブレーキの解除による音である。
軌道法に基づく軌道として特許され、2005年に開催された愛知万博(愛・地球博)の会場アクセス路線として建設された。万博閉幕後は名古屋市営地下鉄東山線や愛知環状鉄道線と連絡し、名古屋市内と東部丘陵地域を結ぶ、地域輸送路線としての利用が期待されている。なお、リニモの開業によってこれまで鉄道空白地帯だった長久手町に鉄道が通るようになった。
路線はおおむね愛知県道6号力石名古屋線に沿って建設されており、藤が丘駅からはなみずき通駅ホーム半ばまでの区間は地下線、はなみずき通駅で地表へ上り、以東の区間は高架線となっている。
「リニモ」ではATOによる無人運転を採用し、また安全面にも配慮して全駅にホームドアが整備されている(地下区間である藤が丘 - はなみずき通間と、最終列車である藤が丘0:05発の愛・地球博記念公園行きに限り全区間で乗務員が乗務)。
なお、東部丘陵線で使われている100形車両は、2005年度グッドデザイン賞[1] と2006年度ローレル賞をそれぞれ受賞した。
また、台北市が東部丘陵線と同じHSSTの導入を検討しているとの報道がされている。
各駅にある「改札口」と「出口」看板には日本語・英語・中国語・朝鮮語表記のほかにポルトガル語表記もある。
通常は藤が丘駅、愛・地球博記念公園駅、八草駅を除いて無人駅だが、窓口は設置されておりイベントなどの時には臨時に駅員が配置されることがある。
最高速度100km/hで、藤が丘 - 八草間の所要時間は約17分。最終列車として藤が丘0:05発の愛・地球博記念公園行きがあるほかは、藤が丘 - 八草間の運転である。平日・土曜休日ともに昼間時10分毎、平日朝ラッシュ時は7分毎の運行体系となっている。年度初めは、臨時列車が運行されることもある。
2005年3月6日の開業時から9月26日まで、愛知万博輸送を前提とした運行体系が採られた。東部丘陵線(リニモ)との乗換駅となる愛知環状鉄道の八草駅は2004年10月10日から2005年9月30日の間、万博八草駅と改称されていた(リニモの駅は開業時から2006年3月31日まで万博八草駅)。
運転間隔は朝と夜が6 - 15分間隔、昼間が5 - 7分間隔であった。3月19日から万博終了までの土曜・休日には昼間8 - 10時台と夜20 - 23時台に藤が丘 - 万博会場間と万博八草 - 万博会場間に区間列車が運行された。
東部丘陵地域が「あいち学術研究開発ゾーン」として学術研究施設や公園、宅地開発が進められることになり、輸送需要の増加に対応でき、交通渋滞に悩まされない軌道系交通機関が求められることになり、元来あった藤が丘 - 長久手間に地下鉄1号線(東山線)を延伸する計画を発展させる形で東部丘陵線の構想が生まれた。
1992年(平成4年)の運輸政策審議会で「2008年までに中量軌道系の交通システムとして整備することが適当」と答申。その後「東部丘陵線導入機種選定委員会」が跨座式モノレール、新交通システム、磁気浮上式鉄道の中から、
などの理由で磁気浮上式鉄道を選定し、方式としては、日本航空が開発し、中部エイチ・エス・エス・ティ開発によって名鉄築港線沿いにあった大江実験線で走行試験が重ねられて来た常電導吸引型 (HSST) が採用された。
また、愛知万博が長久手町の愛知青少年公園などを会場として開催されることが決まり、その鉄道系のアクセス路線の一つとして位置付けられた。
2000年に運営主体として愛知高速交通株式会社が設立され、2002年に着工された。2004年から完成した本線で試運転が重ねられ、2005年3月6日に開業を迎えた。
総事業費は約1,013億円で、このうち愛知高速交通施工分は約362億円である。
万博輸送に際し、リニモは藤が丘駅で接続する名古屋市営地下鉄東山線との輸送力のギャップから、同駅で乗客が滞留する可能性を指摘されていた。6両編成の東山線は1時間あたり14,500人の輸送量があるのに対し、リニモは3両編成で1時間あたり4千人の輸送量しかない。このためか、日本国際博覧会協会では名古屋駅から鉄道で会場へ向かう場合には東海旅客鉄道(JR東海)が中央本線高蔵寺駅経由で愛知環状鉄道線の万博八草駅へ直通運転する「エキスポシャトル」の利用を推奨していた。
愛知万博内覧会が行われた2005年3月19日には、乗客が定員の244人を超えて乗車して過重量となり、車両が浮き上がらないトラブルが発生、一時発車不能になる事態が起きた。同様に開幕前日の3月24日には浮上装置の故障で浮上不能になるトラブルが発生した。
これらに対して、一部のマスコミなどで「予測が甘かった」、「車両をもっと増やすべき」などといった意見が見られたが、この沿線は普段はそれ程多くの輸送力を必要としていないため、ひたすらに車両を増備しても万博閉会後に余剰となる車両は有効活用できないのが実情であった。また、日本国内唯一のHSST方式による新規開業路線であるため、つくば科学博時の常磐線415系電車のように、万博開会前に新車を増備し、閉会後に旧型車を淘汰する手法や、大阪万博時の北大阪急行電鉄のように、閉会後、大阪市交通局に増備車を譲渡する手法を採ることも不可能であった。一方、通常軌条の愛知環状鉄道では、万博に向けて2000系電車を増備し、閉会後に余剰になった旧式の100・200・300形電車をえちぜん鉄道に譲渡している。
運行会社は、万博閉幕後の利用者数を1日あたり約31,000人と想定し、債務返済に向けての前提ともなっていた。しかし、閉幕後6か月間の平均利用者数は約12,000人程度と低迷している。その後の利用者数は年々増加している(2006年度は501万4000人、2007年度は567万7000人、2008年度上半期の1日当たり利用者数は約17,700人)ものの、赤字体質の脱却という経営問題は依然解消されていない。2007年10月には愛知県が長久手町に対し、リニモの今後の固定資産税について減免を打診していたことが明らかとなったが、長久手町は「減免するより、税収を乗客増に生かすべきだ。」としてこの打診を断っている。
利用者数低迷の原因として、以下のような点が挙げられている。
運行会社が学校側に対して藤が丘駅からではなく最寄駅からバスを運行することなどを働き掛けた結果、愛知学院大学が長久手古戦場駅からバスを発着させたこともあったが、利用者僅少により程なく廃止になるなど、思うように成果が出せていない(現在も一部の大学では同様の措置を続行してはいるが、利用する学生が少ない)。
これまでにも、利用者のさらなる増加を狙って、2006年7月15日の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)開園に合わせて、「Linimo1DAYフリーきっぷ」(大人800円、子供400円)の発売を開始したり、愛知県の事業として、2007年6月16日から通勤定期券利用者を対象とした自転車の貸し出しの実施や、長久手町で行われる催事にてリニモの利用を積極的に働きかけるなどの施策を実施しているが、抜本的な経営状況の改善には至っておらず、今後も利用拡大へのさらなる施策が必要な状況にある。2008年度においては、長久手町がはなみずき通・杁ヶ池公園・長久手古戦場・公園西の各駅前に自転車駐輪場を増設する施策を講じている。
千葉都市モノレールのケースの様に、駅周辺のみは宅地開発を認める条例ができれば事態は大きく改善する可能性があり、沿線の一部にはそれを望む声もあるが、大規模な宅地開発の構想に対して反対運動が起きた結果万博の構想も大きく変更になったという経緯を考えると、仮に宅地化を進めるにしても、自然保護との両立は不可欠である。
東部丘陵線の近年の輸送実績を下表に記す。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
| 年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 輸送密度 人/km・1日 |
特 記 事 項 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 通勤定期 | 通学定期 | 定 期 外 | 合 計 | |||
| 2004年(平成16年) | 16.8 | 4.6 | 110.3 | 131.7 | 28,294 | 営業開始 |
| 2005年(平成17年) | 93.2 | 139.3 | 1898.0 | 2130.5 | 29,395 | |
| 2006年(平成18年) | 44.5 | 212.1 | 244.8 | 501.4 | 7,993 | |
| 2007年(平成19年) | 56.2 | 236.7 | 274.8 | 567.7 | ||
| 2008年(平成20年) | ||||||
鉄道統計年報(国土交通省鉄道局監修)より抜粋
東部丘陵線の近年の収入実績を下表に記す。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
| 年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 通勤定期 | 通学定期 | 定 期 外 | 手小荷物 | 合 計 | |||
| 2004年(平成16年) | 32,048 | 5,194 | 264,449 | 0 | 301,692 | 43,992 | 345,685 |
| 2005年(平成17年) | 171,754 | 164,553 | 4,139,596 | 0 | 4,475,903 | 194,001 | 4,669,904 |
| 2006年(平成18年) | 71,355 | 249,778 | 552,354 | 0 | 873,487 | 29,830 | 903,317 |
| 2007年(平成19年) | 0 | 983,602 | 68,387 | 1,051,989 | |||
| 2008年(平成20年) | 0 | ||||||
鉄道統計年報(国土交通省鉄道局監修)より抜粋
東部丘陵線の近年の営業成績を下表に記す。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、2004年(平成16年)以降の値について、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
| 年 度 | 営業収益 千円/年度 |
営業経費:千円/年度 | 営業損益 千円/年度 |
営業外収益 千円/年度 |
営業外費用 千円/年度 |
経常損益 千円/年度 |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 運 輸 営業費 |
販売費 ・ 一 般 管理費 |
諸 税 | 減 価 償却費 |
合 計 | ||||||
| 2000年(平成12年) | 0 | 0 | 3,666 | 0 | 170 | 3,837 | △3,837 | 992 | 8,076 | △10,921 |
| 2001年(平成13年) | 0 | 0 | 11,325 | 0 | 529 | 11,854 | △11,854 | 519 | 8,638 | △19,973 |
| 2002年(平成14年) | 0 | 0 | 14,229 | 0 | 809 | 15,038 | △15,038 | 4,348 | 9,502 | △20,193 |
| 2003年(平成15年) | 0 | 0 | 115,959 | 0 | 2,195 | 118,154 | △118,154 | 8,434 | 30,697 | △140,418 |
| 2004年(平成16年) | 345,685 | 173,887 | 549,897 | 33,957 | 251,686 | 1,009,429 | △663,743 | 181,704 | 147,318 | △629,358 |
| 2005年(平成17年) | 4,669,904 | 510,696 | 1,857,231 | 29,111 | 2,483,865 | 4,880,903 | △211,000 | 171,642 | 294,717 | △334,075 |
| 2006年(平成18年) | 903,317 | 492,253 | 701,278 | 215,225 | 2,303,376 | 3,713,134 | △2,809,817 | 91,047 | 300,304 | △3,019,073 |
| 2007年(平成19年) | 1,051,989 | 824,851 | 184,373 | 202,595 | 2,141,626 | 3,353,446 | △2,301,457 | 16,877 | 318,124 | △2,602,703 |
| 2008年(平成20年) | 1,093,830 | 831,145 | 115,205 | 204,351 | 2,023,137 | 3,173,840 | △2,080,009 | 17,800 | 310,425 | △2,372,674 |
| 2009年(平成21年) | ||||||||||
2007年度(平成19年)決算より運輸・技術部門従事者の人件費及び経費の一部を販売費・一般管理費から運輸営業費に振り替えているため単純比較はできない。
全駅愛知県に所在。
| 駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| L01 | 藤が丘駅 | - | 0.0 | 名古屋市営地下鉄:■東山線(H22) | 名古屋市名東区 | |
| L02 | はなみずき通駅 | 1.4 | 1.4 | 愛知郡長久手町 | ||
| L03 | 杁ヶ池公園駅 | 0.9 | 2.3 | |||
| L04 | 長久手古戦場駅 | 1.1 | 3.4 | |||
| L05 | 芸大通駅 (トヨタ博物館前) |
1.1 | 4.5 | |||
| L06 | 公園西駅 | 1.5 | 6.0 | |||
| L07 | 愛・地球博記念公園駅 (愛知県立大学前) (旧駅名:万博会場駅) |
1.0 | 7.0 | |||
| L08 | 陶磁資料館南駅 | 1.0 | 8.0 | 豊田市 | ||
| L09 | 八草駅 (愛知工業大学前) (旧駅名:万博八草駅) |
0.9 | 8.9 | 愛知環状鉄道:愛知環状鉄道線(18) | ||
大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。
| キロ程 | 運賃(円) |
|---|---|
| 初乗り2km | 160 |
| 3 - 4 | 220 |
| 5 - 6 | 280 |
| 7 - 8 | 340 |
| 9km | 360 |
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八草駅-陶磁資料館南駅間を走る100形車両。 |
万博会場駅(現「愛・地球博記念公園駅」) |
2005年9月撮影。はなみずき通駅-杁ヶ池公園駅間の高架の上を走る車両。 |
2005年9月撮影。車両運転席。 |
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2007年1月撮影。車両運転席(カバーを閉じた状態) |